女性専用風俗 東京秘密基地本店 (出張専門) | 出勤2日目〜活動開始〜

NAGARU(ナガル) 出勤2日目〜活動開始〜
 東京―――最初に見たのも確か、春だった。

 無数の欲望、羨望、希望が複雑に絡み合い、ねばついた泥沼に浮ついた足を取られるような心地で、僕は敷きたてのアスファルトの上を歩いていた。その日は大学の入学式で、よく晴れていた。

 間近で見るとその迫力に圧倒される、巨大な高層ビルの群れ。
 繁華街から脇道へ逸れると姿を見せる、怪しいネオンが光るラブホテル街。
 誰もが聞き覚えのあるターミナル駅の名が次から次へと流れる、山手線のアナウンス。

 なにもかもが新鮮で、そう感じる度に歩みを止め、思わず口をついていた。
「東京すげぇ」

 あれからどれ程の時間が経ったのだろう。
 今では同じ場所を、立ち止まることなく歩いている。
 目に映る東京には、もうあの頃の胸を締め付けるような輝きはない。

 次の予約へと向かう途中、少しの間立ち止まり、じっと手を見る。

 ちょっとは成長できているのだろうか。
 あの頃に思い描いていた、理想の自分に。



※この物語はフィクションです。

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